注意書き
本ブログには、プロダクトに関する誤った説明が含まれている可能性があります。
(特にオプション周辺、間違い等ありましたらご指摘いただけますと幸いです。)
投資判断を行う際にはご自身による精査を願います。
概要
Ribbon FinanceはDeFiにおけるストラクチャード商品(SMBCグループのサイトによると「何か仕組みがひとひねり入ったファイナンス手法」)の提供を目指すプロダクト及び会社です。
後述する4つのカテゴリーの商品を提供予定としており、今回Yealdに該当する「Theta Vaults」がローンチされました。
スマートコントラクトはPeckshieldによって監査されていますが、テスト段階かつ残り2社の監査を待っているため、上限1000ETHのキャップが設定されています。
Volatility(ボラティリティ)
投機やヘッジを目的として暗号資産のボラティリティに対してショート・ロングすることができる金融商品
Yield(利回り)
利回りのある商品とオプションを組み合わせることで高い利回りを得ることができる商品
Principal Protection(元本確保)
債権商品とオプションを組みわせることで、元本を保証しつつ値上がりによる利益を得ることのできる商品
Accumulation(利殖)
プットオプションの自動売却などにより、ユーザが好きな暗号資産を長期的に増やすことができる商品
Theta Vaults について
Theta Vaultsとはカバードコール戦略という原資産(ここではETH)を保持しつつコールオプションを売却する金融商品です。
Theta Vaultsを利用するページが次の画面です。 ユーザができることはDepositとWithdrawだけであり、Current Projected Yield (APY) は+27.78%と表示されています。
オプション取引について詳細に解説しませんが、コールオプションというのはFXにおけるロングに近いもので、コールオプションの購入者は原資産がStrike Priceという価格より高くなるとその差額を受け取ることができます。
一方、コールオプションの売る側は、原資産がStrike Priceより高くなると損をしますが、購入者からプレミアムという手数料を得ることができます。
ここで、原資産を保持しつつコールオプションを売った時の損益のイメージを示したのが次のグラフです。
横軸が原資産(ここではETH)の値動き、縦軸が損益となっており、ETHの価格がStrike Priceを超えなければ、単純にETHをHOLDするより利益が得られていることが分かると思います。
これをカバードコール戦略と言い、原資産の値上がり益を享受することはできないものの原資産の価格推移に関わらずプレミアムという確定した利益を得ることができます。
チームによるバックテストでは、USD建てで見た時に単純にETHをHOLDしているよりも高い利益が得られたとしています。
もちろんバックテストなので今後どうなるかを予測することはできませんが、コール売りに不利な上昇局面でもUSD建てで損していないというのは自分の感覚とずれていたので少し驚きました。
仕組みについて
Ribbon Financeでは、裏側でOpyn v2というオプションプロトコルを利用しています。 Opyn v2におけるコールオプションの売りは次の手順を踏みます。
[TX_1] ETHをOpynのコントラクトに預けてoToken(コールオプション)を受けとる
[TX_2] oTokenを販売する(プレミアムを受け取る)
[TX_3] oTokenの期限が切れたら担保のETHを回収する
そしてRibbon FinanceのTheta Vaultsがやっていることは単純で、集めたETHを使ってOpyn v2でコールオプションを売るだけです。 それだけで(Opynの仕組みによって)カバードコール戦略になっています。
では、Ribbon FinanceのTheta Vaultsを利用するメリットは何でしょうか?
それは①ガス代を削減できるということと、②自分でどのオプションを売るか決めなくて良いということです。
特にガス代は(ETHの価格とgasPriceに依存するのでざっくりとした目安ですが)上記の3つのTXで150ドルから200ドルのガス代を必要とします。 そのため自分でカバードコール戦略をとる場合には、200ドル以上のプレミアムを得ないとペイしません。
また、Theta Vaultsにかかる手数料は引き出し時の0.5%のみで、オプションを売るガス代はチームが負担しています。
2つ目の「自分でどのオプションを売るか決めなくて良い」というのはメリットでありつつデメリットでもあります。
現状、マネージャーと呼ばれる存在がチームにいて、マネージャーは預け入れられたETHを使ってどのオプションを売るかを選択する権力を持っています。 もちろんバックテストで成績が良かった手法を継続して実行すると思いますが、表示されるAPYを上げるために無茶なポジションを取りに行く…ということがないとは言えません。
開発チームに関する情報
Theta Vaultsの発表と同時に、Coinbase venturesなどから投資を受けたと発表しており、HPにも記載があります。
開発者は次の2人が表に出ていますが、会社名や所在地などについては明らかになっていません。
Ken Chan 🎀 (@kenchangh) | Twitter
Julian 🤹 (@juliankoh) | Twitter
小ネタ:開発チームの財務状況?
財務状況についてというか、余裕がありそうというか、Theta Vaultsではチームもしくは関係者の資金から117ETHが入っています。
また、実はTheta Vaultsが出る前にStrangle optionという商品が提供されていました。 商品としてはHegicやOpynなどを利用してコールとプットを同時に買うことによって、上下に関わらずETHが大きく値動きしたときに利益が得られるというものです。
HegicやOpynを使ったことがある方なら分かると思いますが、オプション1つ買うだけでガス代がめちゃめちゃかかります。 そのため、Ribbon FinanceではChi Gas Tokenによるガス代の補助が行われていて当時から「金持ってんなあ…」という印象があり比較的安心できる気はします。
※This is not financial advice
最後に
オプション取引に限った話ではないですが、売る人の反対側には買う人が必ずいなければなりません。 そのため、Theta Vaultsで扱うETHの量が増えて5000ETHとかになったときに全ての売りが捌けるか、というところは少し懸念しています。
ただし、DeFiの参加者はコールを買う人の方が感覚的に多いので、バンバン売れてOpynの復活?に繋がるかもしれません。
以上、オプションDeFiを活用したプロダクトを提供するRibbon Financeの概要でした。
4/16 0:00 追記
コントラクトの仕組み的にチームがスマコンに預けられているETHを引っこ抜いてトンズラすることも可能、ということを書くのを忘れていたので追記しておきます
4/16 23:30 追記
現在、Theta Vaultsのコールオプションはオプション取引会社やマーケットメーカーにAirSwapを用いて販売しています。
つまり、今はまだOpynのオーダーブックに載ってません(将来的にOpynでも売る可能性はあるとのこと)。
参考サイト
Ribbon Finance – Medium
Ribbon Finance: Crypto structured products on Ethereum