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高収益DeFiのワンストップショップ Charm Finance の概要

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はじめに

Charm Financeハイリターンを得ることのできるDeFiのワンストップショップを自称しています。

2021年1月、Charm FinanceはAMMの概念を導入した初めてのオプションプロトコルをローンチしました。 そのため、自分を含めた多くの人がOpynやHegicのように以降はプロトコルの保守・開発を行うと思っていたはずです。

一方、Charm Financeの方向性は異なり、2021年3月に清算のないレバレッジトークンであるCube Token、2021年5月にUniswap v3のLPのリバランスを行うAlpha Vaultsをローンチしました。

このようにCharm Financeは非常に早いペースで新しいプロダクト(それも既存のプロダクトのフォークではない)を生み出しており、様々な商品を取り揃えるワンストップショップを自称するのも頷けます。

本記事では、Charm Financeが提供する3つのプロダクト(2021年5月時点)について解説を行います。 文章量の都合上、使い方や手数料等に関しては割愛しますのでHPにてご確認ください。

注意書き

メインネットで動作しているCharm Financeのプロダクトは全て未監査です(2021年5月時点)。 監査を通す予定はあるらしいですが、監査を待つのはあまり期待しない方が良いかと思います。

そのため、プロダクトを利用する際には失っても構わない範囲でご利用ください。

目次


Charm Options

冒頭でも述べましたが、Charm Financeの最初のプロダクトがCharm Optionsです。

Charm Optionsの最大の特徴はオプションのプレミアムが同一期限のオプションの需要と供給によって決められる、ということです。

例えば、Peer to PeerのオプションプロトコルであるOpynではプレミアムの価格はユーザとユーザの間で決める必要があり、流動性も低くなりがちです。 また、Peer to ContractのオプションプロトコルであるHegicでは、開発者のMollyが手動で入力するIVと呼ばれる数値にプレミアムの価格が依存しています。

Charm OptionsではオプションプロトコルにAMMの概念を持ち込むことで、これらの欠点が解消され、より使いやすく分散型に近くなったと言えます。

仕組み

Charm OptionsではOpynやHegicのように単にコール・プットを提供するのではなく、ブル・ベアスプレッドを提供し、それを組み合わせることでコール・プットを実現しています。

例えば、1ETH250USD・400USD・500USDのコールオプションを実現する場合、次の4つのスプレッドを用意します。

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引用:https://medium.com/charmfinance/charm-options-v0-2-f47c8b386bb0

そして、1ETH400USDのコールオプションを提供する場合はスプレッドを次のように組み合わせることができます。

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引用:https://medium.com/charmfinance/charm-options-v0-2-f47c8b386bb0

これらのスプレッドを全て積み上げるとペイオフの合計は原資産であるETHの価格推移と等しく、プールの原資産を取り合う予測市場と考えることができます。

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引用:https://medium.com/charmfinance/charm-options-v0-2-f47c8b386bb0

そこでCharm Optionsではオプションのプレミアムの算出に「予測市場におけるマーケットスコアリングルール」を用います。 スコアリングルールの詳細については割愛しますが、均衡が取れているプールに対して自身がオプションを売買することによって崩す分をプレミアムとして支払うイメージとなります。

また、以上の仕組みによって同じストライクプライスのオプションの買い・売りは相殺されるため流動性に対して資本効率が高いという特徴もあります。


Cube Tokens

Cube Tokenはスマートコントラクトで実現された3倍のレバレッジトークンです。 理論的にはETHの価格が1%上昇した場合、レバレッジトークンの価格は3%上昇します。

Cube Tokensはレバレッジをかけて高い収益を狙えるだけでなく、清算がないというメリットがあります。

仕組み

次のスクリーンショットはCube Tokensのトップページです。ロングのトークン(cubeXXX)とショートのトークン(invXXX)が列挙されています。

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引用:https://cubes.fi/

これらのトークンは全てのトークンでデポジットされるETHを共有します。つまり、手数料を除けばゼロサムゲームとなっています。

勘が鋭い方は「ロングの利益とショートの損失の釣り合いが取れなくなって破綻するのでは?」と思われると思いますが、その通りです。 このままだとややこしいので、簡単のためトークンの数をcubeETH・invETH・cubeBTC・invBTCに減らして考えてみます。

以下の図のように、ETHがデポジット(それぞれのトークン購入)されているとします。 合計100ETHであることを覚えておいてください。 f:id:vividot:20210517225816p:plain:w400

このとき、ETHが5%上昇・BTCが1%上昇したとします。その場合、それぞれに割り当てられるべきETHは次の図のようになります。 しかし、図からも分かるように合計が100ETHを超えており、全員に払い出しを行うことは不可能です。

これが前述した「ロングの利益とショートの損失の釣り合いがとれない」状況です。

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そこで、Cube Tokensでは正規化というものを行います。具体的には、実際のデポジット残高である100ETHにおさまるようにそれぞれに100/102.7を乗算します。 結果は次の図のようになります。

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スペースの都合上99.9ETHとなっていますが、ちゃんと小数点以下を無限まで足し合わせると100ETHになっています。 このように、Cube Tokensはとてもシンプルなアプローチでレバレッジトークンの実現に成功しています。

一方、必ずしも3倍のレバレッジにならないことに注意する必要があります。上の例では、ETHは5%上昇したのでcubeETHは15%上昇するはずですが、正規化の結果約12%の上昇となっています。

これはトークンのプールシェアや他のトークンの上昇率が影響しており、3倍ではなく2倍になったり4倍になったり多少上下します。 そのため、Cube Tokensを正確に言い表すと「だいたい3倍レバレッジトークン」となります。


Alpha Vaults

Alpha Vaultsは、Uniswap v3の流動性を自動的に管理し、より高い利回りを得るためのプロダクトです。

Uniswap v3に関しては詳細に説明しませんが、流動性を提供する際にレンジを指定することができ、指定したレンジで取引が発生した場合に手数料を得ることができます。 例えば、記事執筆時点のETH-USDCペア(手数料0.3%)の流動性が次の図です。

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引用:https://info.uniswap.org/#/pools/0x8ad599c3a0ff1de082011efddc58f1908eb6e6d8

指定したレンジが狭ければ狭いほど資本効率が良いため、このように現在の価格(赤線)付近で山のような形になります。

一方、ETHの価格は常に動くため指定したレンジから外れる場合があります。 次の図は、流動性のレンジは変わらない状態でETHの価格が2680USDCになった時のイメージです。

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引用:https://info.uniswap.org/#/pools/0x8ad599c3a0ff1de082011efddc58f1908eb6e6d8 を一部改変

少し誇張した例ではありますが、多くの流動性が取り残されており、手数料を得るためにはレンジを調整する必要があることが分かると思います。

Alpha Vaultsはレンジの調整を自動化し、利回りを最大化しようというプロダクトになります。

基本戦略

Uniswap v3で多くの手数料を安定的に得るには、現在の価格を中心にある程度のレンジで流動性を提供するのが最適です。

一方、Uniswap v3にETHとUSDCを1:1のバランスで提供したとします。この時、ETHの価格が上下するとETHとUSDCのバランスは1:1ではなくなります。

その際に再度1:1のバランスで流動性提供すると余るETHないしUSDCが出てきます。 Alpha Vaultsでは、この余ったトークンで片面の流動性を提供します。つまり、2種類の流動性の提供を行います。

例えば、プールに2500USDCと1ETHがあり、1ETH2000USDCであったとします。 レンジの幅を決めるパラメータは別にあるので、完全にイメージとなりますが、その時のリバランス後のレンジは次の図のようになります。

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実際のリバランスの様子

最後に、実際のリバランスの様子を見たいと思います。現在リバランスは1日1回行われており、次は昨日のリバランスをTokenFlowで可視化したものです。 流動性を引き上げた上で、余った方を片面流動性として提供していることが分かると思います。

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引用:https://tokenflow.xyz/tx/0x92e2f142bcfc76769d8ec3576318f229beae91bfa76ab739a6cfb5c9b5837915

収益

ツイートによるとローンチから8日で3.17%の手数料を得たそうです。これをAPY換算(複利)すると323%となり、独自トークンの付与によるAPYのブーストがないにも関わらず、Uniswap v3で2番目に大きいプール(USDC-ETH)で高いAPYを叩き出しています。


最後に

Charm Financeの提供するプロダクトにはある共通点があります。 それはハイリターンが狙えるにも関わらず清算やレンジ調整を考えずに夜ぐっすり眠れること、冗談です。

チームは開発者1人マーケティング1人と小規模であり、今後どこまで手が回るか心配ではありますが、是非チェックしてみてはいかがでしょうか?

以上、ハイリターンを得ることのできるDeFiのワンストップショップCharm Financeの概要でした。

参考サイト

Charm Overview - Charm

Charm Finance Medium

Charm (@CharmFinance) | Twitter